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一般のみなさま

「気管支鏡による検査、治療について」Q&A

 気管支鏡(電子スコープまたはファイバースコープ)は、肺や気管支など呼吸器の病気にかかった患者さんにとって重要な器械で、気管支内を観察すると共に、組織や細胞を採取して正確な診断をつけたり(気管支鏡検査)、気管支が狭くなる病気の治療(気管支鏡下治療)に用いられます。ここでは気管支鏡を使用してどのように検査するのか、どのような治療法があるのか、その概要につき患者さんの疑問にお答えするようにQ&A形式で説明いたします。

Q1:気管支鏡とはどんな器械ですか?(図1)
A1:気管支鏡は直径4~6mmの細くて柔らかい管で、胸の奥深くにある肺につながる気管支の中をのぞき見る器械です。胃カメラと同じ構造ですが、胃カメラと比べると大変細くできています。
図1図1
図1 気管支鏡
Q2:気管支鏡検査とはどんな検査ですか?(図2)
A2:肺または気管支など呼吸器の病気を正確に診断するために、口または鼻からのどを通して気管支鏡(気管支ファイバースコープ)を気管や気管支の中に挿入して内腔を観察したり、組織や細胞、分泌物などの検体を採取する検査です。
図2
図2 気管支鏡で気管支内を観察します
Q3:気管支はどのように見えるのですか?
A3:1本の気管が左右の気管支に分かれて、それぞれがさらに分岐を繰り返して呼吸をつかさどる肺胞に達します(図2)。気管支は分岐するたびに細くなっていきますが、気管支鏡では通常、直径5mm程度の亜区域気管支と言われる気管支まで内腔を確認できます。実際には二股に分かれた土管の内腔を覗いているように見えます(図3)。
図3
図3 気管支鏡で見た気管支内の様子
Q4:どんな症状がある時、どんな病気が疑われる時に気管支鏡検査を受ける必要がありますか?
A4:次のような症状、所見があった時に医師から気管支鏡検査を勧められます。
  1. 痰に血液が混じった場合
  2. 原因不明の咳が続く場合
  3. 胸部レントゲン写真やCT写真で肺に異常陰影がみられ、肺癌や感染症、炎症などが疑われる場合
  4. 喀痰検査で癌細胞を疑う所見がみられる場合
  5. その他、肺、気管支に異常が疑われる場合。
Q5:麻酔はかけるのですか?
A5:あらかじめ、のどに霧状の麻酔薬を吸入したり、スプレーをして不快感を取り除くようにします。場合によっては鎮静剤の注射を行う場合がありますが、その際には検査終了後その作用を弱める薬剤を使用します。
Q6:気管支鏡検査はどんな手順で行いますか?
A6:気管支鏡検査の手順を説明します。
  1. 検査前の一食は絶食となります。
  2. 検査直前にのどの麻酔をします。
  3. 検査の際には酸素を吸ったり、酸素濃度モニターや心電図モニターを装着することがあります。薬剤から目を保護するために目を覆い隠す場合もあります。
  4. ベッドに仰向けに寝ていただきます。口または鼻から気管支鏡をのどを通して気管支まで挿入します。口からの場合にはマウスピースを口にくわえていただき、鼻からの場合には局所麻酔薬を鼻に塗ります。
  5. 一般に左右すべての42本ある亜区域気管支と言われる直径5mm程度までの気管支を観察し病変の有無を確認します。途中で咳が出る場合には気管支内へ局所麻酔薬を追加投与します。検査中普通に息をすることはできますが、気管支鏡が声帯のすきまをとおり抜けるので声はでません。異常などがあれば、検査前に医師からいわれた合図(手でベッドをたたくなど)で知らせてください。検査中はできるだけ肩の力を抜いて静かに呼吸をしてください。危険ですので絶対にご自分で気管支鏡などの器械を触らないで下さい。
  6. さらに、病変部を精密に確認したり、レントゲン透視を併用して細胞や組織を的確な部位から採取します。生理食塩水を入れて洗浄することもあります。
  7. 出血などの偶発症が起きていないことを確認してから、ファイバースコープを抜きとって検査を終了します。検査時間は通常20~30分程度ですが、検査、処置の内容によってはさらに時間を要する場合があります。
  8. のどの麻酔はすぐには切れません。検査後2時間は水や食物を摂らないようにしてください。2時間がすぎたら最初は少量の水を飲んでむせないことを確かめてください。
Q7:気管支鏡検査にはどんな種類がありますか?
A7:組織、細胞などの検体を採取する方法によって以下の検査があります。
  1. 直視下経気管支生検、擦過細胞診 (生検、擦過:Q&A12注1,2参照)
  2. 肺野末梢病巣生検、擦過細胞診 (病巣:Q&A12注3参照)
  3. 経気管支針生検
  4. 経気管支肺生検(TBLB;ティービーエルビー)
  5. 気管支肺胞洗浄(BAL;バル)
  6. 超音波気管支鏡下縦隔リンパ節穿刺(EBUS-TBNA;イーバスティービーエヌエー)
Q8:気管支鏡検査ではどんな合併症がおこる可能性がありますか?
A8:合併症には以下のものがあります。検査の内容によっては起こりやすい合併症や各検査に特有の合併症が存在することがありますので、各検査の説明文書を参照してください。合併症に対しては内科的、外科的処置が必要になることがあります。
(括弧内の頻度は2010年気管支鏡全国調査によるものです)
  1. 肺・気管支からの出血 (合併症発生率0.66%)
     細胞や組織を採取する際には少ないながらも必ず出血を伴います。通常は少量の出血ですぐに止血しますが、まれには出血量が多くなる場合があります。その際には状況に応じた止血処置を行います。処置には、止血剤の注入や、気管支内に風船を入れて出血している気管支を塞いだりすることがあります。極めてまれですが救急救命的に気管内にチューブを入れる処置が必要になった事例や死亡例の報告もあります。
  2. 気胸 (合併症発生率0.4%)
     組織をつまみ取る際に肺を包む胸膜という薄い膜をきずつけることがあります。そこから空気が漏れると「気胸」を起して肺が縮むことがあります。通常は程度の軽いことが多く、2~3日の安静のみで軽快します。喫煙などによって肺がいたんで肺気腫などを合併している場合には空気の漏れの多いことがあり、皮膚から胸に管を入れて空気を抜き取る処置(胸腔ドレナージ)が必要になることがあります。
  3. 発熱や肺炎 (合併症発生率0.22%)
     検査後、まれに発熱したり肺炎を起したりすることがあります。状況によって抗菌薬の投与を行いますが、ほとんどが一時的なものです。
  4. 麻酔薬によるアレルギーや中毒 (合併症発生率0.04%)
     リドカインという局所麻酔薬に対するアレルギー反応を起す場合がまれにあります。その際には気管支鏡検査を中止し必要な薬物投与を行います。麻酔薬の量が体にとって過量になると中毒症状(不安・興奮、ふらつき、血圧低下、不整脈、けいれんなど)を起すことがあります。中毒症状については時間が経過すれば体内で解毒されますのでさほど心配はありません。
  5. その他
     稀ですが喘息(合併症発生率0.07%)、呼吸不全(0.09%)、心筋梗塞、不整脈などの心血管系の障害(合併症発生率0.07%)、気管支閉塞(合併症発生率0.02%)、気管支穿孔(合併症発生率2010年調査では発生を認めず、などの報告があります。ごくまれですが、ここには記載していない合併症、予期しない偶発症が発生したり、死亡例(0.004%)の報告もあります。
Q9:気管支鏡検査による利益、不利益を教えて下さい。
A9:
(1)利益
 気管支鏡検査によって病気の正確な診断を得ることができれば適切な治療を始めることができます。
(2)不利益
 気管支に直径4~6mmの内視鏡を入れます。気道はそれよりも十分に太いので、窒息することはありませんが、咳が出たり、息苦しさを感じることがあります。病変部から組織や細胞などの検体をうまく採取できなければ、正しい診断が得られません。また、診断できても適切な治療がない場合もあります。合併症が起きれば不利益となります。
Q10:気管支鏡検査に代わる検査はありますか?
A10:気管支鏡に代替できうる一般的な方法を解説します。気管支鏡の検査方法ごとに異なる点がありますので、それぞれの検査の説明文書も参照してください。
 病変部から細胞や組織を採取する他の検査方法として、胸に直接針を刺す経皮針生検法と手術によって病変部を切除する方法があります。いずれも気管支鏡検査より診断を確定できる可能性は高いですが、合併症が発生する可能性が高かったり、入院期間が長くなったりします。残念ながらCT検査やMRI、PET検査等による画像診断では確定診断を得ることができません。
  1. CTガイド下肺生検
     主に肺の中にある病変に対して行われます。CTで病変の正確な場所を確認しながら、局所麻酔のもと胸に皮膚から針を刺して、病変から組織を採取します。気管支鏡検査より診断を確定できる可能性は高いですが、気胸(上記【合併症】を参照してください)などの危険率が高まります。気管支鏡より入院期間が長くなります。またごくまれに、病変が、がんである場合、胸腔(Q&A12注4参照)や皮下にがん細胞を拡げてしまうことがあります。
  2. 外科的生検
     胸腔鏡下生検(VATS;ヴァッツ下生検)と開胸生検があります。いずれも全身麻酔のもと行われます。胸腔鏡下生検では胸腔鏡という先端に小型カメラを装着した器械で胸の中を覗きながら行います。通常胸の皮膚に15mm程度の穴を3つ開けて(切開)、胸腔鏡を1つの穴から挿入し小型カメラで胸の中を観察しながら、病変を切除、採取します。開胸生検では胸を開いて肉眼で確認しながら病変部を切除、採取します。いずれの方法とも診断率は非常に高いのですが、全身麻酔による体への負担があり、また気管支鏡より入院期間が長くなります。
  3. 縦隔鏡下生検
     左右の肺にはさまれた中央の部分を縦隔(Q&A12注5参照)といいます。縦隔には心臓や気管、食道などがあります。主に縦隔にある大きな腫れたリンパ節や、縦隔にひろがった腫瘤(Q&A12注6参照)の生検のために行います。縦隔鏡は胸腔鏡と同様、全身麻酔のもと行われます。縦隔鏡は硬い筒状の器械で、これを通して縦隔の内部を観察し、病変から細胞、組織の採取(生検)を行います。縦隔鏡は胸骨の上の皮膚に穴を開けて(切開)挿入します。合併症としては、声がかすれて出にくくなる、血管損傷、出血などがあります。
Q11:気管支鏡下治療にはどのようなものがありますか?
A11:気管支が狭くなる病気に対し気管支内腔を拡張して呼吸を楽にする気管支鏡下治療法には以下のものがあります(後述)。
  1. レーザー焼灼術(PDT、YAGレーザーなど)
  2. 高周波スネアーによる病巣切除
  3. ステント留置術
  4. マイクロ波
Q12:医学用語は難しいので解説をお願いします。
A12:難しい医学用語を解説します
注1 生検(せいけん):
生体から細胞・組織を外科的に切り取ったり、かん子(注9)で一部をつまみ取ったり、針を刺して取ったりして調べ、病気の診断を行う方法。バイオプシーともいう。
注2 擦過(さっか):
病変部から小さなブラシ(図)などで細胞をこすり取って病気の診断を行う方法。
図 ブラシ 図 ブラシ(臨床研修イラストレイテッド6呼吸器系マニュアル 吉澤靖之編 矢野平一著 羊土社2005より転載)

注3 病巣(びょうそう):
病的変化の起こっている場所。
注4 胸腔(きょうくう):
胸膜で覆われた、胸郭の内部。肺・心臓などを収めている。
注5 縦隔(じゅうかく):
左右の肺にはさまれた中央の部分。心臓や大血管、気管、食道などが収まっている。
注6 腫瘤(しゅりゅう):
はれもの、しこり。良性のもの、がんのような悪性のものがある。
注7 限局性病変(げんきょくせいびょうへん):
肺または気管支の一部にとどまった病気。
注8 病変(びょうへん):
病気による生体の変化。
注9 かん子(かんし)(図):
細いワイヤーの先にマジックハンドのように組織をつまみ取る道具がついた器具。
図 かん子 図 かん子(臨床研修イラストレイテッド6呼吸器系マニュアル 吉澤靖之編 矢野平一著 羊土社2005より転載)

注10  肺野(はいや):
肺の中枢部から奥へはいった部分、肺門に対してその周辺。
注11 透視(とうし):
エックス線で体を透かし見ること。かん子やブラシなどの器具の位置を確認しながら病変近くまで誘導できる。
注12 びまん性肺疾患:
広範に両側または片側の肺の中に病気が広がっている場合。
平成27年6月
安全対策委員会
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